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系統樹(けいとうじゅ)とは

生物の進化やその分かれた道筋を枝分かれした図として示したものである。樹木の枝分かれのように描かれることがあるので、こう呼ばれる。

より正確には、系統樹とは、共通祖先を有すると考えられるいろいろな生物種(あるいはそれらの含む細胞内小器官(ミトコンドリア、葉緑体)や遺伝子(あるいはタンパク質のアミノ酸配列)など)の間の進化的関係を樹木状に表現した図(樹状図)である。枝分かれは系統の分岐を示し、枝の長さ、高さは進化の程度や時間経過を表す。分岐分類学の系統樹では子孫が枝分かれする各ノードが最も近い共通祖先を表し、エッジの長さが進化に要したと見積もられる時間に相当する。

系統樹を最初に描いたのは、エルンスト・ヘッケルであった。彼はチャールズ・ダーウィンの進化論に感銘し、動物の系統を進化論に基づいて明らかにしようとした。彼はその根拠として反復説をとなえ、発生の仕組みに基づいて動物の系統に関する自説をまとめ、これを分かりやすく示す手段として大木の枝先に各分類群を配置したような図を作った。この場合、系統的に離れたものほど太い幹からの枝分かれが離れた位置になるように配置し、高等な体制のものほど高い枝に置いた。この場合、枝の長さや高さは必ずしも時間や体制の発達程度を忠実に表すものではなく、何となく上の方に偉いのが、離れたところに進化の進んだのがある、というような図である。しかし、直感的な印象が非常にわかりやすいものであった。

このような曖昧な形式の系統樹に対して、より正確な系統樹を描く試みもなされた。たとえば、古生物学の分野では、古生物のある群の消長がわかれば、横軸に時間を取り、その生物の誕生の時点から絶滅の時点までに至る帯を描くことができる。種数の増減は帯の幅で示す。ここで、この群から別の群が分化したと考えられると言うことがあれば、その時間の点で、前者の帯から枝分かれの形で新しい群の帯を描くことができる。これを繰り返せば、全体としてはやや樹型に見える系統樹を描ける。ただし、この場合、樹木のように根本が太く、先へ行くと細くなるような形を取らず、なにやら炎のような形になる。

より厳格な系統樹を描く方法を提示したのが分岐分類学である。それまでは各分類群の特徴を恣意的に取捨しつつ系統を論じていたのに対して、様々な形質を選び出し、それらを厳格な手順で比較、類似点を求めつつ分岐図を書き上げる方法を示した。そこでは分岐からのエッジの長さは類似度や信頼度のような数字で示され、それが進化に要したと見積もられる時間に相当する。さらに分子遺伝学的情報を用いて、分子時計を利用すれば、(その信頼性は別に論じなければならないとしても)絶対年代までを示しうる。

ただし、その図はやたらチームの多いトーナメント表のごときものになり、直感的な視認性の点では問題がある。そのため、一般読者に向けては、古典的な曖昧な系統樹もまた、需要はある。しかしながら、生物の系統に関する理解は、二一世紀初頭現在、かなりの混乱にある。


今日的問題 [編集]
21世紀初頭である現在は、一般向けにわかりやすい系統樹を書くには、とても困難な状況にあると言える。系統分類学は、いくつもの分野で、新しい方法によって旧来の体系の問題を指摘し、しかし新しい知識は完全な代替案を提出できていない。分岐分類学は、これまでの手法では思いつかなかった分類群間の類似点を指摘することになる場合も多く、さらにそれを分子遺伝学的情報が裏打ちする場合もあれば、さらなる見直しを要求する場合もある。
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今日の進化的知見に基づく、系統樹作成の問題のもう一つが、細胞内共生説である。つまり葉緑体やミトコンドリアが独立生物起源であり、独自のゲノムを持つことがわかったことである。

これまでの進化論では生物進化は種分化の積み重ねと考えられてきた。したがって、その系統を図示すれば樹状になるのは当然と考えられてきた。しかし、共生によって二つあるいは三つの生物が一つにまとまるとすれば、この根拠は崩れる。ただし、当初はこの共生は、真核細胞形成段階の一回きりのものと見なされ、それ以外の部分での変更はなかった。むしろ、葉緑体やミトコンドリアの系統を明らかにすることで、新たな展開が開けた部分がある。

しかし、その後、共生がさらに何度も独立に起こったらしいことが知られるようになった。しかも細胞内共生をおこなった真核細胞が細胞内に共生している例など、大変に入り組んだことが起こっているのがわかってきた。個々の部分ではとにかく、これによって原生生物全体の系統樹は非常に描きにくいものとなった。

さらには、遺伝子の水平伝播も細菌などでは普遍的に起こっていることが明らかになり(他の生物にもそれらしい例がある)、これを厳密に考慮すれば、系統「樹」ではなく甚だ複雑なネットワークとなってしまう。

ヘッケルの描いた系統樹は広葉樹の大木のようだった。太い幹は何度か枝分かれしつつも、上に向かって伸びていた。ジャン=バティスト・ラマルクがもし系統樹を書いていれば、多分針葉樹のようなものを描いたであろう。ホイッタカーの系統樹は、根元で枝分かれした灌木の形であった。現在では、枝分かれを描くことを拒否した、芝生型のそれを描く研究者もいる。

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2009年06月01日 09:33に投稿されたエントリーのページです。

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